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72号
アテネ・オリンピックの個人的雑考
2004年の夏といえば、猛暑とオリンピックだ。アテネ・オリンピックは時差のため観戦がきびしかった。しかし、逆を言えば、昼仕事をしていても夜中さえ起きていられれば、オリンピックを観戦することができたわけでもある。私自身が生で夜中までみたもので印象に残っている競技の1つがシンクロのチーム演技である。金曜の夜中だったこともあり生中継で見ることができた。シンクロナイズドスイミングはすばらしいスポーツだと思う。心技体にわたって高いレベルが要求されるからである。しかし、そのスポーツで1番や2番と順位をつけることがどの程度意味のあることなのだろうか?とふと疑問をもった。以下、シンクロを知らないわたしの全く個人的な意見として書かせてもらう。まず日本もロシアもすばらしい演技だった。そう演技がすばらしかったと表現するのだ。演技とは呼ぶが、シンクロの試合で最高のプレイをしたとはなかなか表現しない。スポーツよりも芸術に近いのか?持っているものを同じ土俵で同じ条件で同じことをやることでの競い合いがスポーツのようにも思える。柔道も水泳も陸上もレスリングもバスケもバレーも野球もそうだ!そんな思いから見ると、審判の評価にもばらつきがある中でわずかな点数の差を争うことへの意味に不思議を感じざるを得ないのである。身体や音楽を使って自己表現するというのならダンスやバレエもある。よい演技は多くの人の心を引きつけ感動する。よいと感じる演技や悪いと感じる演技はあるが、1番や2番はそこにない。音楽の違いや構成の違いが評価されるのはスポーツの心技体とはいささか離れる感もあるがいかがだろうか?音楽の選択や構成の仕方はスポーツなのか?そんな勝手な個人的印象の中で、日本の演技はすばらしかった。壮絶な印象すら受けた。武士というテーマで必死にやっている姿がとても印象的であった。しかし、壮絶さや必死さはスポーツにも芸術にもどうなのか?シンクロという1つの競技種目だが、わたしにはスポーツや芸術どちらからも中途半端に感じられた・・・。勝利や点数を意識していたあまり日本らしさなどにこだわったのかもしれない。そのように日本らしさにこだわった他の競技スポーツはない。もし芸術で勝負するなら、芸術とスポーツの表通項目である“美”を追求してほしいとあくまで個人的には思う。ロシアの演技は美しかった!芸術的なセンスが細胞のすみずみまで存在している、そんな感じを受けた。そんな美に勝とうと考える必要などないのではないだろうか?そもそも美に勝ち負けがあるのだろうか?武士で勝つなら相手をたたき切らなければならないのだから!
スポーツドクター
辻 秀一
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