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体育科教育

人を輝かせる人になるには
スポーツドクターである著者が本書で『人のためになる人』の実例として取り上げるのは、NBAのフィル・ジャクソン監督、マラソンの小出義雄監督、ラグビーの平尾誠二氏などのビッグネームから、人気マンガ『スラムダンク』に登場する安西監督まで個性的な面々。人のためになることは自己犠牲とイコールではない、それどころか、祉会という場で自分の力をより大きく発揮することにつながるという著者の言葉は、豊富なケーススタディーを下敷きとしているだけに説得力がある。周りの人を輝かせ、自分を高める「コーチカーを身に着けるにはどうすればいいのか?本書では、その手法がわかりや.すく解き明かされている。


『人のためになる人ならない人』
辻秀一著  本体1400円
バジリコ株式会社 03・5212・2670


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コーチ力が生み出す人間力
人生の指南本がブームだが、「人のためになる人ならない人」(バジリコ・1400円)は、日米のスポーツ界で名を馳せる指導者の「コーチカ」に焦点を当て、生き方のヒントを導き出していて面白い。
スポーツドクターの辻秀一氏(エミネクロスメディカルセンター主宰)の著。
「コーチカは本来、誰にでも備わり、周囲の人を幸せにするパワーを持っている。スポーツ界の名将はその達人。彼らの生き方や考え方から、人のためになることは自分のためでもあり、人生を豊かにすることを知ってもらいたい」と語る。
同書では、人のためになるコーチカを「理解力」や「人間性」「ユーモア」など20項目に分けて解説。実践力を養うケーススタディも付している。米大リーグやNBAの常勝チームを率いる指揮官の横顔、オリックスの仰木元監督がトップ選手を育てた背景も見えてくる。人生最大の目標は“生きがい探し"ともいわれる昨今、参考にしたい。教育関係者、親、医療従事者には特に読んでもらいたい1冊だ。

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読んでみよう・観てみよう
BOOKS
人のためになる人ならない人
−コーチ力が生み出す人間力・社会力
辻 秀一 著
(バジリコ株式会社/1400円+税)
 著者の辻さんは言わずと知れた、本誌で“ドクター辻のスポーツ情報”を執筆しているスポーツドクターです。本著は、その辻さんの「コーチ論」を簡潔にまとめたものです。辻さんの文章はいつも、平易に書かれていてスラスラと読めてしまいます。
 この本もそうでした。しかし、自分のスポーツ活動・経験、子育てなどとを重ね合わせると、その文章は、一変して、深く考えさせられます。それは、本著が「スキルを持つ以前に、人間として持っていなくてはいけない『人のためになる』という人問の生き方、考え方」に重点をおいたものだからでしょう。
 本著を読み、日本のスポーツ界の状況を考えたとき、コーチ力を必要とする場面を数多く思い浮かべることができます。
 例えばジュニア期、部活でのスポーツ活動は、指導に連続性がないところがほとんどです。そのためいろんな弊害が出ています。その一つは「燃え尽き」現象ではないでしょうか。選手の意欲や目標の持ち方、体力的な特性などが考慮されず、結果=勝つことだけが先行しがちで、一年中練習に明け暮れるというのは、よく聞く話です。
 スポーツを楽しむどころか、イヤになって止めてしまう人を作りだしてしまいます。こうしたこともコーチ・指導者の考える必要のあるところでしょう。
 また、トップレベルの競技活動においても、そうしたことは見聞きすることができます。
スキーノルディックの荻原選手は、絶好調の時も常に「もっと上を目指し」て、練習に取り組んでいたそうです。しかし、結果は逆になり、調子をくずして、一番いいときの状態をとりもどせず、最近引退を発表しました。その荻原選手が、好調時の感覚を模索していたときの発言として、「これでいいんだよ、という一言があれば良かった」と伝えられています。このことは、選手はいつももっといい物をと考えていますから、変える必要がないときは“今が一番いい状態なんだ”という言葉を、客観的に見ている人に掛けて欲しいし、ということではないでしょうか?
 コーチカを必要とする状況は、スポーツ界にたくさんあります。辻さんの、この本を書く動機もこうしたところにあるでしょう。
 “失敗を糧にする”ということはよく言われますが、“失敗した”ことを受け入れなければならないこと、そのことを理解することは、本人にとってむずかしいものです。そうしたスポーツをするもののメンタル面にも言及されており、自分の不十分さを改めて確認をするには充分な本でした。本著の中に出てくる、「大丈夫です。自らも知識を学び、より理解を深めていけばいいのです」に救われた気持ちです。こんなところも辻さんのコーチカでしょう。(茨 正)

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体育科教育
えつらん室

人のためになる人ならない人
−コーチ力が生み出す人間力・社会力―
● 辻 秀一 著
● バジリコ 発行
● 四六判176ページ・本体価格1400円

日本大学医学部講師
メンタルスキルコンサルタント
田中ウルヴェ京
最近、コーチングが流行っている。つい数年前までは「コーチ」といえば「スポーツコーチ」を意味することが大半だったが、今ではビジネスでの成功のために助言、指導する「コーチ」という職種が大流行である。そして、コーチングの内容そのものに関しても、ビジネス書だけでなく育児書や女性専門の情報誌などにも登場するようになってきた。
現在、書店に並んでいるコーチング関連の本では、おもにコーチングスキルを説明しているものが多いが、本書『人のためになる人ならない人』では、そのコーチングスキルの原点とも言うべき「コーチする側の人間に必要な心構え、考え方、生き方」のようなものの探求、考察が試みられている。そもそもコーチという立場の人間の根底にあるべき理想的なモチベーションは「人のためになりたい」という思いだと著者は説明している。
著者は、まず第1章で「人のためになる」生き方、考え方をコーチ(COACH)力と名付け、その能力は決して特別なものではないこと、誰もが持っている資質であることを説明している。そしてコーチ(COACH)力の基本として、COACHの5文字に、C=comprehension(理解力)、O=outlook(見通す力)、A=affection(愛情)、C=character(人間性)、H=humor(ユーモアカ)をあてて、それぞれの必要性を、わかりやすく論じている。
また第2章で、その基本のコーチ(COACH)力をさらに詳細に解説、第3章と第4章では、著者が「この人にはコーチカがある」と選出した実際のコーチ達を紹介し、具体的にそれぞれのコーチカを解説、さらになぜそういったコーチカが必要なのかを論じている。
最終章では、それらの名コーチ達のコーチ(COACH)力を理解した上で、我々読者が、「自分はどうなのか」といった自己診断ができるように、いろいろなケーススタディを紹介してくれている。提示されている20のケーススタディは、自分を振り返るのに非常に役立つであろう。
この『人のためになる人ならない人』は、大変読みやすく一気に読破できる。特に、現在スポーツコーチや体育教師という立場にいる者であれば、なおさら等身大の自分自身と比較しながら読むことができるので興味深いと思われる。少しシニカルな言い方かもしれないが、あえて付け加えるならば、こういった関連の本に懐疑的な気持ちでいるコーチ・教師の方々には特に読んでみていただきたい。
なぜなら、我々スポーツコーチや教師を客観的に観察してきたスポーツドクターである著者からのこういった提言を、素直にロジカルに受容できるかどうかという点でも、まさにコーチカが問われているからである。
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