SPORTS EVENT BASKETBALL
第352回
My Team
チームエミネクロススポーツ塾
東京都

最大の目的は社会性育成
 体育館を覗くと、小学生たちが大きなボールを胸に抱え、一生懸命にゴ一ルを狙う姿があった。それもそのはず、彼らが抱えていたボールのサイズは7号。通常ミニB・Bで使用するのは5号ボールであり、高校生以上が使用するのと同じものを使っているのである。そして、一生懸命に狙うゴールも同じく、通常の高さだ。
 エミネクロスはスポーツドクターで辻秀一先生が、「B・Bを通して社会性を育てる」という理念のもとで開いた、いわゆる“スポーツ塾”。一風変わった、と言っては度が過ぎるかもしれないが、大会などに出場して上位を目指すという『強くなるためのB・B』ではなく、スポーツを文化としてとらえ、その素晴らしさを伝えること、その中でひとりの人間として社会性.を育てていく、という理念のもとでチームを運営している。怒られながら技術、体力のレベルアップを図り、強くなるだけではスポーツの本質の部分が薄れてしまう。人間が本来身につけるべき心の本質にふれる指導、学ばなくてはならない人間学を、いろいろなスポーツ、選手を通して指導するのが目的だ。
 「小さい頃からB・Bを始めて、例えば全国大会に出場するなどの良い結果を残すことができなくても、ここで社会性が育っていればきっと他のスポーツやスポーツ以外の何かでも輝くことができる。だから今、B・Bを通して社会性を育てるということを子供たちに伝えていきたいと思っているんですよ」(辻先生)。
 対象は小・中学生。毎週土曜日に都内の体育館で練習を行っている。年令やレベルに応じて、「桜木」「三井」「宮城」「流川」とB・Bの人気漫画である『スラムダンク』の登場人物から名前をとって、十数人ずつのチームを編成。「楽しく、一生懸命」が最大のルールだ。
多彩な選手との交流も
 チームの発足は今から4年前。辻先生がいろいろなスポーツを通じて、「スポーツを通して学んだ経験を社会に活かす」というテーマのもと、クリニックや出版活動など、スポーツに関する様々な活動を行なう「エミネクロスメディカルセンター」を設立。この年、当時所沢ブロンコス(現さいたまブロンコス)のコーチで、以前から全国各地の子供たちにB・Bの魅力を伝える活動を展開していた東野智弥さん(現トヨタ自動車Aコーチ)と出会い意気投合、「工ミネクロススポーツ塾」を開くこととなった。
 直接の指導に、あたったのは東野さん。開講当初、体育館を訪れたのはたったの2人だったが、そこから口こみや、新聞にエミネクロスの記事が掲載されたことなどから次第に人数が増え始め、現在は約50人が参加するまでになった。東野さんのあとを現在は金田詳徳さん(元早大主将)が引き継ぎ熱心な指導を続けている。
JBLの日立元Hコーチのロバート・D・ピアスJr.さんもコーチとして参加。その他に元さいたまブロンコスの選手として活躍した北村良さん、森一誠さんもオンザコート・コーディネーターとしてサポートにまわるなど、多彩な顔ぶれだ。
 練習の合間をぬっては塾長である辻先生が子供たちに向かって問いかける。「うまくいくために必要なことは何ですか?」「相手のいい所はどこですか?」子供たちは自分の意見を口々に言葉にしていく。内容も大事だが、まず言葉に出して相手に伝えること、そこから社会性を育てていくのがエミネクロスの方針だ。
 エミネクロスのもうひとつの魅力は子供だけではなく障害者アスリートや一流スポーツ選手、外国人選手との交流も大切にしていること。辻先生が全日本車椅子B・Bチームのドクターも務めることから、車椅子B・B選手と合同キャンプを通して、さらなるスポーツの楽しみ方を学ぶ機会も設けた。子供たちにとっては、将来に向けての貴重な体験として心に刻まれたはずだ。
 「スポーツは医療である。教育である。芸術である。」文化として根付いていない日本のスポーツ界に向けて、改革を迫る大きな一歩かもしれない。スポーツに対する情熱を胸に、ひとりでも多くの子供が社会へ飛び出していく将来を育成することが辻先生の思いだ。
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